秘密の地図を描こう
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数日は何事もなかった。だが、その静けさが逆に怖いと思っていたのは自分だけではないはずだ。
「いったい、何をしでかしてくれるのでしょうね、今度は」
ラウはそう呟く。
「さぁ、な。まぁ、こちらとしてはキラ達にゆっくりと時間を与えられただけよしとしよう」
バルトフェルドがそう言って笑った。
「確かに。機械が完成しただけでもいいのでは?」
マリューもそう言ってくる。
「それが別の意味で問題だがな」
ため息とともにカガリが口を挟んできた。
「モルゲンレーテに機材一式があった、と言うことは……オーブがその研究にかかkわっていたと言うことだ」
誰が、と言わなくてもわかるが……と彼女はため息をつく。
「まぁ、それも今回はプラスになったのですもの。いいことにしましょう」
キラが追い詰められなかっただけでも自分達にはよかったと考えるべきではないか。ラクスがそんなカガリを慰めている。
「それに、これも今後のためにはプラスですわ」
セイランの有責が増えていくと考えればいいのではないか。後でそれを追及する材料にすればいい。彼女はそう続けた。
「なるほど」
そう考えれば妥協できるか、とカガリはうなずいている。
「そういえば、キラはどうしたんだ?」
ニコルもいないが、とバルトフェルドがラウへと視線を向けてきた。
「眠っていたのでおいてきましたよ。ニコルは見張りです」
何故か、キラの方があの二人になつかれている。それはかまわないと思うのだが、さすがに疲労がたまるようでは困るのではないか。
「私では二人を興奮させるだけなのでね」
困ったことに、と彼はため息をついてみせる。
「彼らの言う『ネオ』と同じことを求められても困るのだが」
自分が優先すべきなのはキラだけで、他の人間にまで気を配ることはできないのだが……と付け加えた。
「あらあら。わたくし達はついでですか?」
ラクスが即座に問いかけてくる。
「少なくとも、キラがいなければ出会わなかったものがいることは否定しませんよ」
ここにいることすら考えられなかっただろう。そう続けた。
「それを言うなら、わたくしもですわ」
「否定できんな」
即座にラクスとバルトフェルドがうなずいてみせる。
「まぁ、キラの拾い癖も悪いばかりではない、と言うことか」
もっとも、とカガリは苦笑を浮かべた。
「あれは失敗だったと思うぞ」
しかし、ひょっとしたら、あれは拾ったのではなく押しかけられたのか? と彼女は首をかしげる。
「訳のわからないうちに押しかけられた、と言うのが事実でしょうか」
ラクスまでそう言った。
「まぁ、あいつのことは脇に置いておけ。当分、動けないらしいからな」
スケジュールがぎちぎちらしい、とバルトフェルドが笑う。
「ミーアさんがそう言っていましたわ」
何でも、プラント寄りの国々から引っ張りだこらしい。
「もっとも、あくまでも『ラクス・クラインの婚約者』という立場でらしいですけど」
機体が直るまではどうしようもないだろう。その一言であきらめているらしい。
「その間に、本人が自分の悪いところに気づいてくれればいいんだが」
アスランだからなぁ、とカガリはため息をつく。
「本気で評価が最低ランクまで落ちたからな、あいつは」
それから元通りになるだけでも大変だな、とバルトフェルドは言う。
「経験がおありですの?」
マリューが即座にそう問いかけている。
「ノーコメント、と言うことにしておこうか」
とりあえず、と彼は平然と言い返す。
「悟られないのも大人の条件だしな」
しかしそう続けた彼に女性陣がどのような視線を向けたのか。あえて言わないでおこう。